在留資格「経営・管理」許可基準の見直し決定

こんにちは。FP・行政書士すのはら事務所です。

自民党総裁選で高市早苗氏が当選し初の女性内閣総理大臣誕生かと思いきや、公明党が連立政権から離脱し先行き不透明な状況ですが、先般、与党が敗れた参議院議員選挙では外国人に関する問題が大きな争点となりました。現在も将来的にも、日本は外国人労働者などの力が必要ではないかと思いますが、一方で不法残留や、文化の違い等による地域住民との摩擦、税金等の未払いなど様々な問題がある事も事実です。今夏、中長期在留資格の厳格化を打ち出しましたが、この度在留資格「経営・管理」許可基準の改正が発表されました。

5つの改正点

今回の主な改正点は下表の通りです。

1、資本金の額等について

資本金・出資額の基準についてはこれまで500万円以上となっていましたが、今回の改正で3000万円以上に変更されます。法人については資本金の額、または出資の総額。個人事業主の場合は、事業所の確保や雇用する者の給与(1年分)、設備投資経費など、事業を営むために投下されている総額をさします。

2、経歴・学歴について

これまで特段の要件はありませんでしたが、今回の改正で以下の要件が設定されました。
①事業の経営又は管理について3年以上の経験を有する
②「経営・管理」又は「申請する事業」に関する博士、修士、若しくは専門職の学位を取得している
このどちらかの要件が必要となります。3年以上の経験には「特定活動」に基づく起業準備期間を含みます。

3、雇用義務について

これまでは申請者1人だけの会社等でも申請することが出来ましたが、今改正により、申請者が営む会社等において、1人以上の常勤職員を雇用することが要件となりました。この常勤職員は「日本人」「特別永住者」のほか、「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」に限定されます。「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格をもつ職員を雇用することは問題ありませんが、この雇用義務要件を満たす事にはなりません。また「常勤職員」なのフルタイムで働く職員でないとこの義務を満たすことにはなりません。

4、日本語能力について

これまでは日本語が分からなくても「経営・管理」ビザを取得出来ましたが、今回の改正で申請者又は常勤職員のいずれかが相当程度の日本語能力を有することが必要となります。「相当程度の日本語能力」とは文化庁による「日本語の参照枠」における「B2」相当以上となっています。B2は「自分の専門分野の技術的な議論も含めて、具体的な話題でも抽象的な話題でも複雑なテクストの主要な内容を理解できる。お互いに緊張しないで熟達した日本語話者とやり取りができるくらい流ちょうかつ自然である。」となっており、高いレベルの日本語能力が必要になります。
具体的には以下のいずれかに該当すれば「相当程度の日本語能力がある」と判断されます。
・日本語能力検定(JLPT)でN2以上
・BJTビジネス日本語能力テストで400点以上取得
・中長期在留者として20年以上日本に在留している
・日本の大学を卒業している
・日本の義務教育(小1~中3)を修了して高校を卒業している
なおこの要件における常勤職員は雇用義務の常勤職員とは違い、「技術・人文知識・国際業務」など出入国管理法別表第一の在留資格により在留する外国人も含まれます。

5、事業計画の取り扱いについて

申請に際し提出する「事業計画書」について、具体性、合理性、実現可能性を評価するため、「経営に関する専門的な知識を有する者」による確認が義務付けられます。専門的な知識を有する者とは、中小企業診断士、公認会計士、税理士となっています。

その他に関する取扱い

・「業務委託」を行うなどにより経営者としての活動実態が十分に認められない場合は、「経営・管理」に該当する活動を行うとは認められないものとして取り扱われます。
・改正後の規模等に応じて経営活動を行うための事業所を確保する必要があることから、自宅を事務所と兼ねることは原則として認められません。
・在留期間中、正当な理由なく長期間の出国をしていた場合、日本における活動実態がないものとして在留期間更新が認められません。
・在留期間更新時には公租公課の支払い義務の履行状態が確認されます。

施行日は10月16日

今回の改正による新基準は10月16日の申請から適用となります。10月15日までに申請受理され審査が行われているものについては改正前の許可基準が適用されます。また、現在「経営・管理」で在留中の外国人が、施行日から3年を経過する日(2028年10月16日)までの間に在留期間更新許可申請をする場合については、改正後の基準に適合しない場合であっても、経営状況や改正後の基準に適合する見込み等を踏まえて、許可の判断が行われます。施行日から3年経過後の在留期間更新申請については改正後の基準に適合する必要があります。

これまでの要件に比べるとかなり厳しいものになっている感じがしますが、これまでの基準が諸外国に比べるとハードルが低く、実体の伴わない民泊経営等に悪用されていたなどの例もあったようです。今回の改正で、日本経済に本当に寄与する、優良な外国人経営者による優良な会社が増えてもらいたいと思います。

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