不動産に関するルール変更2

相隣関係の規定の見直し

前回、相続登記の申請義務化、相続土地の国庫帰属制度についを取り上げましたがこの4月からの不動産に関するルール変更はまだまだあります。これもよくワイドショーでとりあげられますが、庭の木の枝が道路にはみ出て通行人の障害になり危険・・とか。。人に迷惑をかけているのだから自治体が切ってしまえ・・・と思いますが、現行法だと根っこは切っても良いけど枝はだめ・・・なんでそうなるの・・・と昔から思っていた
ことですが。そのようなことを含めご近所との規定が変わります。

隣地使用権について

現行法では「土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる」とありますが、「隣地の使用を請求することができる」の具体な意味が明確でなく隣地所有者が所在不明の場合の対応が困難だったり、障壁・建物の築造・修繕以外の目的で使用できるかが不明確で、土地の利用・処分について不都合がありました。

そこで改正法では、土地の所有者は、所定の目的のために必要な範囲内で、隣地を使用する権利を有するという事が明確化されました。権利と言っても自分から一方的に権利を行使することはできません。相手方に使用を拒まれた場合は、妨害禁止の判決を求めることになります。

また隣地使用に際しては原則として、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地所有者に通知しなければなりません。また日時、場所、方法は、隣地所有者のために損害が最も少ないものを選ばなければならない、と隣地所有者への配慮も記されています。

隣地使用権が認められる目的は
①障壁、建物その他の工作物の築造、収去、修繕
➁境界標の調査・境界に関する測量
③新民法233のⅢによる越境した枝の切り取り
となっています。

ライフラインの設備の設置・使用権

他人の土地や導管等の設備を使用しなければ各種ライフラインを引き込めない土地の所有者は、法解釈上、他人の土地への設備の設置や他人の設備の使用をすることができる、と解されています。ところが明文規定がないため、設置・使用に応じてもらえない場合や、権利行使する際の事前通知の要否等ルールが不明確だっり、また使用する際の使用料の支払い義務の有無も不明確で不当な承諾料を請求されることがあるなど、不都合なことがありました。

そのため改正法では、設備設置権、設備使用権が明確化されました。この場合も設備の設置・使用の場所・方法は他の土地及び他人の設備のために損害が最も少ないものに限定となっています。また権利があると言っても自力執行は禁止されており、設置・使用を拒まれた場合には妨害阻止の判決を求めることになります。

他の土地に設備を設置し又は他人の設備を使用する土地の所有者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地・設備の所有者に通知しなければならないとされています。もし通知する相手方が所在不明等の場合であっても例外なく通知が必要とされています。そのような場合は簡易裁判所の公示による意思表示を利用することとなります。

費用については、他の土地に設備を設置する際に次の損害が生じた場合には、償金を支払う必要があるとされました。

①設備設置工事のために一時的に他の土地を使用する際に、当該土地の所有者・使用者に生じた損害(償金は   一括払い)これは、他の土地の工作物や竹木を除去したために生じた損害などが挙げられます。
➁設備の設置により土地が継続的に使用することができなくなることによって他の土地に生じた損害(償金は一年ごとの定期払いが可能)これは、給水管等の設備が地下でなく地上に設置されたことにより、その場所の使用が継続的に制限されることによる損害などが挙げられます。

また他人が所有する設備の使用については、その設備の使用開始の際に損害が生じた場合に、償金を支払う必要があります。またその利益を受ける割合に応じて、設備の修繕・維持等の費用を負担するとなっています。

越境した竹木の枝の切り取り

現行法では、土地の所有者は、隣地の竹木の根が境界線を越えるときは自らその根を切り取る事ができるが、枝が境界線を超えるときはその竹木の所有者に枝を切除させる必要がある。となっています。竹木の所有者が枝を切らない場合には、訴えを起こし判決を得て強制執行の手続きをとるしかありません。また竹木が共有されている場合には共有者全員の同意が必要と考えられています。枝を切ってもらうために、ずいぶんと大変なことですよね。

そこで、越境された土地の所有者は、竹木の所有者に枝を切除させる必要があるという原則は維持しつつ、次のいずれかの場合には、枝を自ら切ることができる事となる。

①竹木の所有者に越境した枝を切除するよう催告したが、竹木の所有者が相当の期間内に
 切除しないとき(相当の期間は基本的に2週間程度)
➁竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき
③急迫の事情があるとき

越境された土地の所有者が自ら枝を切り取る場合の費用については、基本的には竹木の所有者に請求できると考えられているようです。

できるものなら隣地の方とは平穏にやっていきたいものですね・・・・

                   ⇩

          「行政書士すのはら事務所ホームページ」