年金の脱退一時金

こんにちは。FP・行政書士すのはら事務所です。
先週、外国籍の方から電話相談があり、その中で厚生年金保険の話がでました。その方は法人を立ち上げており、従業員を一人雇用しており、その方も外国籍とのこと。商売もなかなか厳しく、厚生年金保険料なんて払いたくない・・・とのことでした。雇用されている従業員も、そのうち自国へ戻るかもしれず、そうすると年金などもらうこともできず、保険料を払うだけ損・・と言っているとのこと。脱退一時金については理解していない感じでした。

脱退一時金制度

日本の年金制度では、国内に居住している限り外国人も強制適用となります。たとえ短期滞在であっても、厚生年金保険の適用事業所で働いていれば、適用除外に該当しない限り70歳までは被保険者となります。しかし短期滞在を予定している外国人にとっては、長期加入が前提の老齢給付は受け取ることができないまま帰国という事になります。そのため1995年、そのような外国人のため、脱退一時金の制度が設けられました。

脱退一時金の支給要件

国民年金の脱退一時金の支給要件

①日本国籍を有しないこと
②公的年金制度(国民年金または厚生年金保険)の被保険者でないこと
③国民年金第1号被保険者としての保険料納付済期間を6か月以上有すること
④老齢基礎年金の受給資格期間(10年)を満たしていないこと
⑤障害基礎年金の受給権を有したことがないこと
⑥日本国内に住所を有しないこと
⑦日本に住所を有しなくなった日から2年以内に請求を行うこと
 ※日本の公的年金の被保険者でなくなった日の方が遅い場合は当該日

厚生年金保険の脱退一時金の支給要件

①日本国籍を有しないこと
②公的年金制度(国民年金または厚生年金保険)の被保険者でないこと
③厚生年金保険の保険料納付済期間を6か月以上有すること
④老齢厚生年金の受給資格期間(10年)を満たしていないこと
⑤障害基礎年金の受給権を有したことがないこと
⑥日本国内に住所を有しないこと                                  日本年金機構等が請求書を受理した日に、住所がまだ日本にある場合には、脱退一時金は請求できないので、住んでいる市区町村に転出届を提出した後で、脱退一時金を請求するようにします。
⑦日本に住所を有しなくなった日から2年以内に請求を行うこと
 ※日本の公的年金の被保険者でなくなった日の方が遅い場合は当該日

脱退一時金の支給額

脱退一時金の支給額は以下のように計算されます。

国民年金の場合

[最後に保険料を納付した月の属する年度の保険料額(令和6年 16,980円)]x 1/2x 一定の数

一定の数は保険料納付済期間により6~60まで10段階になっています。ちなみに納付済期間が60か月だとすると、16980円x1/2x60か月で509,400円になります。ここから約20%の税金が引かれます。

厚生年金保険の場合

[平均標準報酬月額]x [18.3% x 1/2 ]x 一定の数 となります。
一定の数は被保険者期間によりこちらも6~60まで10段階になっています。

60か月の平均標準報酬月額が25万円だとすると
250,000円 x 9.15% x 60か月で1,372,500円になり、ここから税金が引かれます。
少ない金額ではないようにも思いますが。

脱退一時金受取りの注意点

日本と年金通算の協定を締結している相手国の年金加入期間のある人は、一定の要件のもと年金加入期間を通算して、日本および協定相手国の年金を受け取ることができる場合があります。そのため日本で脱退一時金を受け取ってしまうと、日本での加入期間が本国での加入計算期間にならなくなってしまうので注意が必要です。(現在23か国と協定が結ばれています)

電話の外国人の方が言っていたように「払い損」と感じている人が多いのは事実でしょう。今後、外国人が将来の年金を受けやすくするための制度変更の審議がスタートするとの報道がありました。脱退一時金についても保険料計算のための上限月数を現在の5年(60か月)から8年(96か月)にする方針とのこと。日本の労働力もますます外国人頼みとなりそうですし、安心して保険料を納付してもらえるような制度改革が必要ですね。

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