成年後見人制度の見直し検討開始

現在の成年後見制度は2000年に介護保険制度の導入と同時に始まり、認知症や知的障害等で、自身の財産管理や相続に関する手続き、介護保険などのサービスや施設の入所などの契約手続き等が困難な方を支援する制度です。しかし実際に利用されているのは約25万人で、要介護(要支援)認定者の約697万人と比べると活用度は低い状態です。

法定後見制度と任意後見制度

成年後見制度には法定後見制度任意後見制度があります。法定後見制度は判断能力(事理弁識能力)を欠く常況にある人を保護対象とする制度で、家庭裁判所が申し立てを受けて後見開始の審判を行い、本人のために後見人を選定します。申し立てできるのは本人、配偶者、4親等以内の親族、検察官等になります。任意後見制度は本人が正常である間に、判断能力が不十分な常況となった場合に備え、本人が選んだ任意後見人(受任者)と委任契約を結ぶものです。契約の効力は家庭裁判所により任意後見監督人が選任された時から生ずる旨の特約を付す必要があります。

法定後見制度の難点

家庭裁判所に選任された法定後見人には広範囲な代理権と取消権が与えられます。そして本人のために「法律行為」、「財産管理」、「身上監護」を行います。具体的には、預貯金の管理、施設との契約、不動産管理、年金手続き等があります。これらの行為は家庭裁判所の監督のもと、本人のために行われ、推定相続人や家族のための行為は基本的にできません。成年被後見人となった本人の財産から、相続対策としての生前贈与、不動産売却、投資商品の購入などはできません。また成年被後見人に選ばれるのは本人の家族とは限りません。特に管理する財産が多額で複雑な場合は第三者が選任されるケースが多くなっています。同じ家族の財産なのに思うように使うことができなくなるのです。そしていったん法定後見人が選任されると本人の能力が回復するか亡くなるかまで続き、さらに家庭裁判所が決定する成年被後見人への毎月の報酬が発生します。調査によれば平均で年33万円とのこと。10年続くと330万円。これは大きな金額と言えるでしょう。

任意後見制度の場合

任意後見は本人と受任者がその後見内容を決定し、公正証書による契約を締結し、本人または受任者の申し立てにより任意後見監督人が選任されることにより開始となります。委任契約のひとつなので受任者の報酬や委任契約終了事由なども契約書の中で決めることができます。ただし後見監督人の報酬は発生します。また法定後見のように広範囲な権限があるものではなく、実施する行為は契約書の中に定められた内容に限られます。

見直しの論点

今回始まろうとしている見直しの論点は、
・制度の「期間制」
・契約などの法律行為を包括的に代理する後見人の権限を制限する仕組み
・後見人の交代をしやすくする仕組み
・後見人報酬決定に際する考慮事項

等とのこと。
制度を利用する側からすると、法定後見が一度始まると終身やめられず、報酬も発生し続ける点が一番の難点のようです。

今後一層の高齢化社会を迎える日本。将来的には1000万人を超えるであろう認知症患者とその家族、さらには地域のため、より良い制度改革を期待したいと思います。

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